トランプ大統領の敬礼が波紋を広げている(写真は朝鮮中央テレビから)

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北朝鮮国営の朝鮮中央テレビが米朝首脳会談の様子を収めたドキュメンタリー番組を放送し、生中継の映像からは分からなかったことも明らかになってきた。

その中で波紋を広げているのが、ドナルド・トランプ大統領が北朝鮮の閣僚とあいさつする場面。軍服姿の男性に対してトランプ氏が「敬礼」したとして、「米国が北朝鮮の軍隊に従った『証拠』」になりうる、という指摘だが出ている。

北朝鮮とは今でも「戦争状態」だが...

ドキュメンタリー番組は2018年6月14日午後に放送。長さは42分に及び、金正恩・朝鮮労働党委員長が平壌を出発し、シンガポール観光や米朝首脳会談を経て平壌に戻ってくるまでを収めた。

波紋を広げているのは、両首脳の対面後、正恩氏がトランプ氏に北朝鮮の閣僚を紹介する場面。李洙ヨン(リ・スヨン)党副委員長に続いて、正恩氏は軍服姿の努光鉄(ノ・グァンチョル)人民武力相を紹介した。その際、トランプ氏が握手しようと手を差し出したところ、努氏は握手せずに右手を上げて敬礼。直後にトランプ氏も同様に敬礼した。その後、努氏から手を差し出し、トランプ氏は笑顔で握手に応じた。

米国では、ロナルド・レーガン大統領の時代から、大領領が軍人から敬礼を受けた際、大統領も敬礼を返すのが慣例だとされている。ただ、それを外国の軍人に対して行うのは異例。しかも朝鮮戦争で結ばれたのはあくまで「休戦協定」で、韓国と米国主導の国連軍は、厳密には北朝鮮と戦争状態だ。

何もわかってないのか、計算ずくか...

こういったことを背景に、米シンクタンク研究員のジーン・H・リー氏はツイッターで、

「米国が北朝鮮の軍隊に従った『証拠』として、北朝鮮のプロパガンダで繰り返し利用されるであろう瞬間だ。北朝鮮人にとっては、軍事的勝利だと受け止められるだろう」

などとトランプ氏の行動を疑問視。リー氏はAP通信の平壌支局長として北朝鮮に赴任していたことがあり、北朝鮮から初めてツイートした人物として知られている。

ワシントンポストは、このトランプ氏の行動を前出のリー氏のコメントを引用する形で批判。CNNは(1)トランプ氏は、自分の行動の意味が理解できていなかった(2)正恩氏を尊重しているというメッセージを送ることで、交渉を有利に進めようとした、という2つの可能性を指摘している。